フランチャイズ本部は、ビジネスモデル特許を取得するべきか?

フランチャイズビジネスにおいて、ビジネスモデル特許は取得すべきものでしょうか?

目次

 

ブルーオーシャンだったはずが・・・

「独自のビジネスモデルを構築して実績を上げ、そのノウハウを加盟店に提供することで多店舗を推進する」

業界の先駆者として、いち早くフランチャイズ展開を開始するフランチャイズ本部のイメージです。
競合のない市場(ブルーオーシャン)で順調に成長する。
すばらしい展開です。

このような本部は、先行者利益を享受できることが多いです。
しかし、情報化社会においては、ビジネスモデルはあっという間にコピーされてしまいます。
そして、次々に競合が、自社の背中を追いかけてくるようになります。

うまく逃げ切れたら良いですが、競合の出現が早すぎて、ブルーオーシャンが、あっという間に、競合だらけのレッドオーシャンになるということも珍しくありません。

当初、自社だけが持っていた独自の強みを、競合も持つようになると、これまでと同じやり方では、差別化が出来なくなってしまします。
そこで、新しい武器をつくって競争力を再度高めよう!と考えます。
しかし、そう簡単ではありません。

結果、消耗戦に突入しヘトヘト、ということになりかねません。

そこで、検討したいのがビジネスモデル特許です。

しかし、ビジネスモデル特許のイメージは、

  • 聞いたことはあるけど良くわからない
  • 取得するのが難しそう
  • 一時期よく聞いたけど、結局あまり使えないんでしょ

という感じではないでしょうか。

そこで今回は、ビジネスモデル特許について考えてみたいと思います。

ビジネスモデル特許とは?

一般的に、ビジネスモデル特許と呼ばれていますが、法律上の用語ではありません。
特許庁のサイトでは、「ビジネス関連発明」と表現されています。
つまり、「ビジネスに関連した発明に与えられる特許」という意味合いです。
ここで、少し難しいですが、特許法における発明の定義を見てみます。

「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」

自然法則とは、例えば重力、電気、磁力などがあたります。
つまり、人がつくったルールや理論をもとにした、金融商品や生命保険などは、独自性のある素晴らしいものでも特許の対象となりません。
技術的思想には、物の発明と方法の発明がありあます。
物の発明は、機械や装置など、方法の発明は、製造方法や測定方法などを指します。

では、ビジネスモデル特許、
つまり、ビジネス関連発明とはなんでしょうか?

物の発明でも方法の発明でもなさそうです。
また、単にビジネスのやり方だけだと、自然法則を利用しているとはいえず特許の対象となりそうにありません。

これで特許と言えるのでしょうか。

特許庁のサイトには、以下のような説明があります。

(引用)

 ビジネス関連発明※とは、ビジネス方法がICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を利用して実現された発明です。
 特許制度は技術の保護を通じて産業の発達に寄与することを目的としています。したがって、販売管理や、生産管理に関する画期的なアイデアを思いついたとしても、アイデアそのものは特許の保護対象になりません。
 一方、そうしたアイデアがICTを利用して実現された発明は、ビジネス関連発明として特許の保護対象となります。

出所:特許庁ホームページ

要するに、ビジネスモデル特許とは、

ICT(情報通信技術)を利用して実現したビジネスの方法で、まだ他社が行っていないもの

ということです。

どんなに素晴らしいビジネスの方法、やり方でも、ICTを活用していなければ、ビジネスモデル特許の対象とはならないということです。

ビジネスモデル特許って取るのが難しい?

ビジネスモデル特許は、2000年に特許申請のブームがありました。
この頃に検討した企業も多いのではないでしょうか。
しかし、ブームは長続きせず、申請件数もピーク時の三分一程度まで減少しました。
その後、スマートフォンやSNSの普及が進むと共に、AI、IoT、AR、VRなどの技術が新たなサービスを次々と生み出し、ビジネスモデル特許の申請件数も2012年以降増加してきています。

また、当初のブーム時に低かった査定率(特許として認められた率)も、2015年で約69%と急激に上昇し、「取るのが難しい」という意識も変わってきている思われます。

ビジネス関連発明の特許査定率の推移 (ビジネス関連発明自体を主要な特徴とする出願を対象) 
出所:特許庁ホームページ

フランチャイズ本部がビジネスモデル特許を取得する際のメリットと留意点

いわゆるビジネスモデル特許は、特許法に基づいた「特許」として保護されます。
つまり、競合が同じようなビジネスモデルで事業を行うことを阻止できる可能性が高まります。

これは、独自のビジネスモデルを確立したフランチャイズ本部にとっては非常に大きなメリットです。
実際、弊社のクライアントでも、ビジネスモデル特許を取得していたので、大手企業の市場参入を阻止できたという事例もあります。

しかし、取得にはデメリットも。

まずは、競合の参入を阻止できるとしても範囲が限定されることが挙げられます。
特許なので適用範囲が決まっています。この範囲に抵触しないように真似されたら防げません。

ビジネスモデル特許活用の成功例として有名な、いきなり!ステーキの場合も、特許取得後に「特許の有効性に対する異議申立」を他者から受けたため、権利の範囲を縮小することになりました。

結果、約1年で競合が続々と参入する状況となりました。
※しばらく阻止できたので成功事例と考えられますが

次に、特許申請するとノウハウが公開されます。
仮に特許が取得できなかった場合でも、競合に独自ノウハウが知られる可能性があります。
これですぐに業務に支障がでることはないでしょうが、場合によってはデメリットと感じられるでしょう。

あとは、多くの場合、取得に専門家の支援が必要で費用もかかる。取得までに時間を要するといったところですが、メリットと比較すれば、大きな障害とならないでしょう。

このように、ビジネスモデル特許の取得は、フランチャイズ本部にとって、差別化された競争力を維持することにつながります。

既にフランチャイズ本部を運営している企業も、これからフランチャイズ本部の立ち上げを目指したい企業も、是非取得を検討してみてください。

具体的なサポートの相談はコチラから。

松久 憲二

投稿者プロフィール

株式会社アクアネット フランチャイズ経営研究所 副社長COO シニアコンサルタント
一般社団法人日本フランチャイズコンサルタント協会 代表理事
特定非営利活動法人 起業応援倶楽部 理事長
昭和43年生まれ。大分県出身。
宮崎大学工学部電子工学科卒業後、大手コンサルタント会社、大手生命保険会社を経て現職。
フランチャイズ本部の立ち上げから加盟店開発などを中心とした経営コンサルティング、執筆および講演等の活動を行っている。

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