フランチャイズチェーン展開にメリットはあるか?

現在、日本では (一社)日本フランチャイズチェーン協会の統計調査で把握できているだけで、フランチャイズチェーン数は約1300、店舗数は26万店を超える規模に拡大しています。日本にフランチャイズチェーンが登場してから52年を数えますが、その間ほぼ右肩上がりで成長してきています。それほどの成長を遂げているフランチャイズビジネスですが、なぜこれほどの成功を遂げているのでしょうか。

フランチャイズチェーン展開には、それほどのメリットがあるのでしょうか?

目次

<フランチャイズ本部のメリット>

まず、直営展開と比較して、フランチャイズ本部側のメリットって何でしょうか?

  1. 少ない資金で多店舗化が可能

    直営展開の場合は、出店に関しての投資はすべて自前で調達する必要があります。フランチャイズ展開の場合は、加盟店が出店にかかわる費用を負担するので、本部は出店のたびに多額の費用が必要とはなりません。逆に、加盟金などのイニシャルフィーを受けとることができるので、出店の都度資金が増えるということも起こりえます。

  2. 多店舗化のスピードが速い

    仮に出店にかかわる費用は、自前で賄えるくらいの余裕があるという企業もありますが、直営で多くの店舗を一気に出店するとなると費用以上に大変なのが人の確保です。まして、店長になるよう人材を多数採用し続けるといいうのは、至難の業です。結果、コストも膨れ上がります。しかし、フランチャイズ展開の場合は、加盟オーナーを募集することで人材採用のリスクは軽減されます。経営者として独立しようという気概のある人材が加盟オーナーとなることで、人材の確保は一気に解消されます。結果、店舗展開のスピードが加速します。

  3. キャッシュフロー重視の経営が実現できる

    フランチャイズチェーン展開を行うことによって、店舗設置にかかわる費用、人材の確保にかかわる費用、いわゆる固定費が劇的に軽減されます。したがって、大きな固定費負担を強いられる直営展開と比較するとフランチャイズ展開のほうが、キャッシュフローが極端に良くなります。これは、ストックよりもキャッシュフロー重視という現在の経営サイドの要請にぴったり合っているのです。

  4. 地域に密着したマーケティング活動が可能となる

    フランチャイズシステムは、比較的小規模で地域に密着したマーケティング活動が要求される事業に向いています。しかし、直営店の場合は、通常、店長や事業責任者が数年で異動となってしまいます。したがって、地元での付き合いが希薄になり、継続的に固定客を繋ぎとめておけないというようなことも起こり、結果として売り上げがダウンしてしまうというようなことにもなってしまします。一方、フランチャイズ加盟オーナーは、その地域に住んで長く同じ店舗を運営するパターンが多数を占めます。したがって、地元に密着した品ぞろえや販促活動を行うことができ、地元の方々に愛される店づくりを行うことが可能となります。

<フランチャイズ本部のデメリット>

一方、フランチャイズ本部にとっては、デメリットが無い訳ではありません。

  1. 加盟店が本部の経営に影響を与える可能性がある

    フランチャイズチェーンにおいては、フランチャイズ本部と加盟オーナーは資本関係も雇用関係もなく、たんにフランチャイズ契約を締結しているだけという関係です。しかし、加盟オーナーの協力なくしては、フランチャイズチェーンは存続できません。したがって、加盟オーナーの意見に本部の経営が左右されるという事態も生じます。契約に著しく反するような不当な要求にまで応える必要はありませんが、加盟店が繁栄し続けるためには、本部側も加盟オーナーの要望に応えることも多く生じます。これはチェーン全体の繁栄には欠かせないことですが、ワンマン社長にとっては、我慢できないというような場合も見受けられます。そんな経営者にはフランチャイズ本部の運営は難しいかもしれません。

  2. 加盟店の行動がブランドイメージを損ねる可能性がある

    直営と比較すると本部の指示に従わない加盟オーナーが出てくるリスクは高まります。結果として、ブランドイメージを損ねてしまい、他店やチェーン全体にマイナスイメージを与えてしまう可能性が高まるということです。しかし、最近は直営店でもパート、アルバイトの比率が増加とともにリスク発生の可能性が高まっています。どちらにしても、本部の指導体制を整備することが欠かせないということかもしれません。

  3. フランチャイズ加盟オーナーの募集に先行的にコストがかかる

    多店舗展開にあまり資金がかからないと前記しましたが、加盟オーナーの募集に関しては、先行的に費用がかかります。フランチャイズ本部を立ち上げたからといってすぐに加盟希望者が殺到するわけではありません。まずは、自チェーンの存在を発信するためにはそれなりの費用が必要です。さらに、加盟店を集めるということは、営業活動です。そのためのツール開発や広告宣伝、さらに専任担当者など先行的にコストは発生します。

以上のようなメリットとデメリットを勘案したうえで自社にフランチャイズ展開がふさわしいかどうかを判断してください。

民谷昌弘

投稿者プロフィール

株式会社アクアネット フランチャイズ経営研究所 代表取締役社長
(一社)日本フランチャイズコンサルタント協会 会長
フランチャイズビジネス全般のコンサルタントとして、百社を超える新規本部の立ち上げを支援し、これまで数百社に及ぶフランチャイズチェーンの運営改善や教育研修、加盟店開発支援などの実績を持つ。
(一社)日本フランチャイズチェーン協会
 SV学校、経営士講座、FC本部構築講座 講師
独立行政法人中小企業基盤整備機構  経営支援アドバイザー

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企画・編集/株式会社アクアネット フランチャイズ経営研究所
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