フランチャイズ・システムと価格拘束

フランチャイズ本部の方からよく受ける質問の一つに、
「本部が加盟店で提供される商品やサービスの価格を決めると独占禁止法に違反することになるのですか?」というものがあります。

この点、公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドラインでは、

・本部が加盟者に商品を売っている場合には、原則として再販売価格の拘束(再販)に該当する。
・そうでない場合でも、本部が加盟者の販売する商品や提供する役務の価格を不当に拘束すると拘束条件付取引に該当する。不当になるかどうかは、地域市場の状況、本部の販売価格への関与の状況等を総合勘案して判断する。

とされており、フランチャイズ・システムにおいても、再販は原則違法、拘束条件付取引も不当に行うと違法ということで、通常の場合と同じように判断されるようです。

なお、フランチャイズ・システムの場合、再販、すなわち、本部から買った物を加盟店がそのまま販売する場合は少ないと思いますが、拘束条件付取引によって価格を拘束する場合と再販の場合とで競争に与える影響が異なるとは思えませんので、上記のガイドラインでは再販と拘束条件付取引に分けているものの、以下では「価格拘束」ということでまとめて論じたいと思います。

価格拘束

価格拘束については、独占禁止法上、原則として違法であると考えられておりますから、本部が加盟者に対して商品やサービスの価格を拘束することはできないということになりそうです。

一方で、フランチャイズ・システムにあっては、直営店も加盟店も同じ料金が採用されていることが通常ですし、フランチャイズ契約書でも、商品やサービスの価格については、本部が指定できるようになっていることが多いと思います。

価格拘束が原則として駄目だとすると、これは違法なのでしょうか?

違法ではないとする説明の一つとして、本部の指定する価格は推奨価格であって、加盟店を拘束するものではない、というものが考えられます。

しかし、推奨価格とすると、加盟店がそれを守らなくても、本部は何も言えないことになります(それでもいいということであれば、話はここでおしまいですが・・・)。
実際上も、単純な推奨にとどまっているとはいえない場合が多いのではないかと思います。

そもそも価格拘束がなぜ独禁法上問題になるのかといえば、「公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)」があるから、ということになるでしょう。
というよりも、公正競争阻害性がある場合に違法となるのですが、この場合、阻害される競争とは、当然フランチャイジー同士の間の競争ということになります。

同業の本部同士が競争しているということは理解しやすくても、フランチャイズ・システムにおいて、フランチャイジー同士の競争というのは考えにくいと思います(テリトリー制をとっていればなおさらでしょう)。

私は、本部同士が十分競争しているといえれば、本部がフランチャイジーに対して価格拘束を行っていたとしても、市場における価格競争を阻害するものではない、と考えるべきだと思います。

従って、私は、個人的には、フランチャイズ・システムにおいて加盟店の販売価格を拘束したとしても、必ずしも違法とはいえないと考えています。

ガイドラインでは、フランチャイズ・システムを以下のように定義しています。

「本部が加盟者に対して、特定の商標、商号等を使用する権利を与えるとともに、加盟者の物品販売、サービス提供その他の事業・経営について、統一的な方法で統制、指導、援助を行い、これらの対価として加盟者が本部に金銭を支払う事業形態」

「統一的な方法で統制」されるはずのフランチャイジーが、価格については独自に設定して、他のフランチャイジーと張り合う、というのがフランチャイズ・システムからしたらそもそもおかしいように思います。

価格設定については本部の重要な経営上の方針であるとともに、フランチャイジーに提供されるノウハウの一部であるはずです。値段は自分で勝手に決めてくれというのでは、フランチャイジーもかえって困ることになるのではないでしょうか。

チェーンとして一体となることで統一的なイメージを作り出し、消費者に認知してもらうことで他のチェーンと競争をする、その点が十分確保されているのであれば、それで「一般消費者の利益を確保する」には十分ではないでしょうか。

消費者の側から見ても、同じイメージの店舗で同じ内容のサービスが受けられるというのがフランチャイズ・システムの魅力ではないかと思います。

同じチェーンの店の中で最安値の店を探すということが消費者の利益になっているとは思えません。
A店より安いB店があったのでそこで商品を購入したら、その後もっと安いC店を見つけた場合、その人はきっとがっかりすることでしょう。

そのようなことが続けば、当該チェーンに対して不信感が生まれ、ひいてはそのチェーンの競争力をそぐことになり、結果として、かえってチェーン間の競争を阻害することになると思われます。

この点、ガイドラインでは、価格拘束が問題になる理由として、

「加盟者が地域の実情に応じて販売価格を設定しなければならない場合や売れ残り商品等について値下げして販売しなければならない場合などもある」

といっておりますが、これらは加盟者と加盟者の競争の問題でないことは明らかです(本部と加盟者との問題として、優越的地位の濫用の問題とすべきでしょう)。

通常の商品の販売における価格拘束とフランチャイズ・システムの違いは何か?

通常の商品の販売における価格拘束とフランチャイズ・システムの違いは何なのでしょうか。

それは、公正取引委員会がフランチャイズ・システムの定義で認めているとおり、

フランチャイズ・システムが、単に商品を供給するものではなく、ビジネスのフォーマットを加盟者に提供するものだから

ということになるでしょう。

フランチャイズ・ビジネスにおいて、当然価格設定が重要な要素になると思いますが、それを含めてフランチャイジーに実施してもらうことで、全体としての統一性を保ち、ひいてはチェーンの競争力につながることになるのだから、フランチャイザーの価格拘束を直ちに競争制限行為とする必要はない(少なくとも原則違法とするのはおかしい)ということです。

現状では、価格拘束の場合、市場やそこにおける状況等について十分に考慮されていないので
(例えば「流通・取引慣行ガイドライン」でも、価格拘束については市場における有力な事業者の基準が適用されていないなど)、少なくとも、市場を確定し、当該市場に与える影響力を勘案の上、公正競争阻害性を判断するべきではないかと思います。

これによれば、通常のフランチャイズ本部のほとんどで、価格拘束は問題にならないということになるでしょう(もちろん、問題とすべき場合もあると思います)。

 

鈴木 伸佳

鈴木 伸佳弁護士

投稿者プロフィール

昭和40年9月17日生まれ 東京大学法学部卒 弁護士
日本フランチャイズチェーン協会顧問
通常の民商事件に加え、本部の側からフランチャイズ・システムに関する様々な問題を 扱う。

鈴木伸佳法律事務所
http://n-suzukilaw.jp/

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