フランチャイズ・システムと優越的地位の濫用(2)

3.フランチャイズ・システムにおける「優越的な地位」と「濫用」の事例

以下では、平成21年6月22日付で、コンビニエンスストアの本部であるB社に対し、優越的地位の濫用に該当するとして排除措置命令が出されたケース(http://www.jftc.go.jp/pressrelease/09.june/09062201.pdf)について検討してみたいと思います。

なお、この事件は、平成21年改正法施行前の事件になります。

(1)優越的な地位の根拠となった事実

B社については、以下のような事実をもとに、フランチャイジーに対して優越的な地位にあると認定されています。

①B社は、加盟者の合計が約12,000店舗、年間の売上額が2兆5700億円で、日本におけるコンビニエンスストアの最大手の事業者であり、一方、加盟社のほとんどすべてが中小の小売業者である。

②B社は、加盟者との間で使用を認める商標等に関する統制や加盟者の経営指導、援助の内容などについて規定した加盟店基本契約を締結している。
この加盟店基本契約では、契約期間は15年とされ、原則として更新せずに終了することになっている。
また、Aタイプ(加盟者が自ら用意した店舗で経営を行うタイプ)の加盟者は、契約終了後1年間の競業避止義務が課され、Cタイプ(B社が用意した店舗で経営を行うタイプ)の加盟者は加盟店基本契約書終了後直ちに店舗をB社に返還することとされている。

③B社は加盟店基本契約に基づき、加盟者が販売することを推奨する商品(推奨商品)及びその仕入れ先を加盟者に提示しているが、店舗で販売される商品のほとんどすべては推奨商品となっている。

④B社は、加盟者の店舗が所在する地区にオペレーション・フィールド・カウンセラーと称する経営相談員(OFC)を配置し、加盟店基本契約に基づき、OFCを通じて加盟者に対して経営に関する指導・援助等を行っており、加盟者はそれに従って経営を行っている。

ガイドラインの基準でいえば、①が本部の市場における地位と両者間の経営格差②が取引先の変更可能性③と④が取引依存度になると思います。
フランチャイズ契約の期間が15年間もあるとはいっても、フランチャイザーからの中途解約権がないか、あっても制限されているかどうか、あるいは、推奨品の販売やOFCの指導がフランチャイザーの義務になっているかどうかについては全く触れておりませんので、実際に打ち切れるか不利益を加えられるかどうかを問わず、抽象的に取引を打ち切られたら困るといえれば、「優越的な地位」に該当するとの立場をとっているようです。
ただし、取引を打ち切られれば確かに困るかも知れませんが、実際上取引を打ち切られるおそれについて十分に検討せず、いきなり加盟社はB社の要請に従わざるを得ない立場にあると結論づけるのは、少々言葉が足りないように思います。

(2)濫用行為

B社は、販売商品のうち、いわゆるデイリー商品は、B社の設定した推奨価格で販売されるべきとの考え方をとり、加盟者に対してその周知を図っているところ、加盟者が廃棄することとなった商品の原価相当額全額が加盟者の負担となる仕組みの下で、

①加盟者がデイリー商品のうち、販売期限が迫って来たものについて、値段を引き下げて販売するという、いわゆる「見切り販売」を行おうとしている場合には、OFCを通じてそのような行為を行わないようにさせる。

②加盟者が見切り販売を行ったことを知ったときは当該加盟者に対して見切り販売を再び行わないようにさせる。

③上記のような措置にもかかわらず加盟者が見切り販売をやめないときは、OFCの上司が加盟者に対し、加盟店基本契約の解除等の不利益な取扱いをする旨を示唆するなどして見切り販売を行わないようにさせる。

これらの措置によって、加盟者は、見切り販売の取りやめを余儀なくされており、それによって、加盟者が、自らの経営判断に基づいて廃棄になるデイリー商品の原価相当額の負担を軽減する機会を失わせていると、公正取引委員会は認定し、これが、「取引の相手方の不利益になるように取引を実施」したことに該当するとしました。

この結論を導いた大きな理由が、フランチャイズ契約上、加盟者が加盟店で販売する商品の販売価格は自らの判断で決定するとされていたことではないかと思います。
契約では自由であるはずの販売価格の決定を本部が優越的な地位を背景に妨げて、加盟者に不利益を負わせたことになるからです。

また、フランチャイズ契約の解除等を示唆したと認定されていますから、B社のフランチャイズ契約上(筆者はこれを見てはおりませんので推測になりますが)、本部からの中途解約権が規定されており、それがB社の優越的な地位の根拠となったとすると、結果として優越的な地位を認定したこと自体も、本件にあっては妥当だったといえるかも知れません。

4.実務上はどのように対応したらよいか?

では、フランチャイズ本部としては、優越的地位の濫用にならないようにするために、どのようにすればよいのかを最後に検討してみたいと思います。

  • 当初の契約条件として明確化する。

    フランチャイズ契約は、どうしてもフランチャイジーに対して様々な要請を行い、事業の遂行においても色々と制約を加えることになります。
    これは、フランチャイズ・システムの性質上やむを得ないものだと思いますが、前述のように、解釈の仕方によっては、割と容易にフランチャイザーにフランチャイジーに対する「優越的な地位」が認められやすいので、フランチャイジーの義務については可能な限り契約書上明確にするということが必要になります(なお、ガイドラインには、当初の契約条項であっても優越的地位の濫用が問題になるかのような記載がありますが、フランチャイズ契約を締結する際にフランチャイジーになる側が既にフランチャイザーに対して劣った地位にあるということは通常考えられませんので、妥当ではないと思います)。

    上記のB社のケースでも、販売商品の販売価格について、契約書上本部の定める価格とすると決められていたら、B社の要請は、単に当初の契約条件を守れということになりますから、少なくとも、優越的地位の濫用が適用されることはなかったのではないかと思います。契約を守れということ自体は、正常な商慣習を持ち出すまでもなく当然のことだからです。

    もっともこの場合、フランチャイザーによる価格統制の可否という別の独禁法上の問題が生じることになります。これもまた重要な論点となりますので、別の機会に論じてみたいと思います。

  • 指示・指導の理由が合理的なものであるかをチェックする。

フランチャイザーが優越的な地位にあったとしても、フランチャイジーに不利益であれば、全く何の要請もできないわけではありません。それが正常な商慣習に照らして不当になされた場合に違法になります。このあたりガイドラインによれば、「フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施」するために必要なものか否かという点が一応の判断基準になるでしょう。

なお、フランチャイズ契約あっては、フランチャイザーに、フランチャイジーに対する一般的な指示や指導の権限が認められていることがあります。
このような規定があれば、契約上の根拠があるということで、どのような指示・指導をしても良さそうですが、もちろんそう考えるべきではありません。
何のためにそのような権限があるのかを考えれば、当然、それがフランチャイズ・システムによる営業を的確に実施するために必要だから、ということになるからです。

  • フランチャイジーに一定の出費、負担を強いるものについては、粘り強く交渉し、きちんと合意する。

フランチャイザーとして必要だと思うことについては、当初の契約書で規定していなかったとしても、システムに導入しなければならないこともあります。
この場合、フランチャイジーに対しては、きちんと説明して納得の上、合意してもらうことが重要です。
フランチャイズ・システムに必要といえる合理的な理由があるのであれば、フランチャイジーに本心から納得してもらった上で導入すれば、優越的地位の濫用とされるリスクはほとんどなくなるといってよいでしょう。

鈴木 伸佳

鈴木 伸佳弁護士

投稿者プロフィール

昭和40年9月17日生まれ 東京大学法学部卒 弁護士
日本フランチャイズチェーン協会顧問
通常の民商事件に加え、本部の側からフランチャイズ・システムに関する様々な問題を 扱う。

鈴木伸佳法律事務所
http://n-suzukilaw.jp/

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